南極海の酸素安定同位体比δ18Oを測る ―南半球の水循環変動の理解を目指して―

近年、地球規模の水循環変動に伴って、南極海洋では場所により顕著な低塩分化が観測されている。つまり、海への淡水のインプットが増えている、ということになる。従来、温暖化にしたがって南極大陸近傍の積雪が増える可能性があることが指摘されてきたが、最近では棚氷の融解など、陸氷起源の淡水流入の増加が指摘されている。この低塩化は、南極底層水の沈み込む量を抑える可能性があるなど、地球規模の気候変動に影響を与えるためその要因を特定することが重要であるが、塩分の変化をみているだけでは、その変化の原因までは分からない。

酸素の安定同位体比δ18Oは、水塊、特にその淡水分の履歴を理解するうえで有用なトレーサーである。淡水流入による海水の塩分変化の要因には主として海氷融解、降雪、氷河の融解が挙げられるが、塩分の変化のみではこの要因の推定は不可能である。ここでそれぞれの淡水分の持つ酸素安定同位体比は、海の上の積雪起源、氷床起源、また海氷起源で大きく違ってくる。この大幅な違いを使えば、塩分の変化が生じた原因についての推定が可能となる。現在いわれているような陸棚水の低塩化が降雪の増加によるものなのか、氷床の融解によるものなのかといった気候変動に関する問題から、夏場の海氷融解量についての推定など、δ18Oは様々な用途に利用できる。

当研究室では、実際に南極海で得られた海氷サンプルの酸素安定同位体比を同位体質量分析計Finnigan Delta-Plusを使って分析している。また、航路上で取得された積雪や氷山も、淡水起源のタイポイント用の資料として分析する。こうしたデータから、南極大陸を中心とした南半球の水循環変動の実態把握を目指している。


・海水の酸素安定同位体比

・降雪の酸素安定同位体比

・酸素同位体比のデータ